硫黄島
クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』を観て来ました。
『男たちの大和』のような感動ではなくって、壮絶すぎて、戦争の本質的な怖さを感じました。
『大和』は悲しみというか、生きたいと願う人や、祖国や家族を護りたいという気持ちを持った人たちが、たくさん死んでいく悲しみが強かったんです。だから結構泣けたんです。
でも、『硫黄島』は、人間の深いところから来る、死の恐怖とか、極限状態での心理のようなものが描かれていて、ロマンだけでは戦争はできないし、「祖国のため」とか「家族のため」といった観念だけでは、戦争はできないのだと感じました。
家族への手紙に書かれたことと、現実とのすさまじいギャップ。「家族のために死ぬつもりなのに、家族がいるからこそ死ねない」というジレンマ。そういう葛藤が描かれていました。
泣かなかったから、感動しなかったわけではなく、帰りに『栗林忠道 硫黄島の戦い』(宝島社)を買ってしまいましたwwそのくらい感動しました(買えばいいってわけじゃないですけどw)。
役者では渡辺謙さんが栗林中将をやったんですが、当然のように上手かったw『ラストサムライ』のイメージが強い人は、結構クロスするかも。
中村獅童さんは『隣人13号』系の凄みがありますねww最後どうなったんだろ?なぞだw
嵐の二宮くんは年齢設定が30代なのか、かなりがんばっていたかなあ。でも、とっても自然な演技で、とってもよかった。
すごい映画なんですけど、たぶん現実の状況にはほど遠いと思うんです。当たり前ですけど。
よく、山本五十六もそうですけど、栗林中将も欧米文化に精通していて、開戦前から日本が負けるだろうことを感じていた、という話があります。
そういった人たちが「戦争イクナイ」とかいっても、たぶん強硬派が戦争につなげていったと思うんです。
欧米の文化が高いから戦争は避けるべきだ、というのは、それはそうなんだけど、当時の日本の状況など考えても、開戦せざるを得なかったと思うのです。そして、人材をどんどん使い捨てにしていくような戦い方をしていったのは、今でもそうですけど、日本人の特質なのかもしれません。
だから、欧米がエライわけではないけれど、日本人は自分たちの馬鹿さ加減に自覚していくべきだと思いました。
しかし、こういう映画は日本人には作れないのかもですね。『男たちの大和』は好きですけど、『硫黄島からの手紙』とは質的に違う映画だと思うんです。あるいみ、イーストウッドが硫黄島に興味をもって、今回の映画を作ったということは、客観的に日本を見るいい機会だったのかもです。